顔面神経麻痺の解説

ある日、突然に片方の顔がこわばり、しゃべりずらくなったり、口から水がこぼれたり、目が閉じにくくなる症状は、顔面麻痺の可能性があります。 
多くの場合は、末梢性の顔面神経麻痺ですが、中には中枢性顔面麻痺(脳そのものが障害を受けて起こるもの)もあり、その場合は命の危険にかかわります。いずれにしても、いち早く病院を受診し適切な診断と治療を受けるのが肝要です。

顔面麻痺の中には、急性期の段階から鍼灸治療を併用すると治りが早いものもあり、当院では主にベル麻痺、ハント症候群に対して専門的な鍼治療を行っています。
また、当院スタッフは顔面神経麻痺に精通していますので、生活上のアドバイスやリハビリテーション、マッサージ法などのアドバイスも可能です。

<当院の鍼治療で期待できる効果>
・発症初期、急性期における神経再生の促進
  (鍼灸による顔面神経への血流促進)

・麻痺側に生じる顔に違和感や痛みの緩和
  (鍼灸による鎮痛、筋疲労の改善)

・顔の筋肉が動かしにくいことで生じる首・肩のこり
 (多くの方が首肩に随伴症状を生じます

・慢性期における表情筋の筋拘縮、ひきつれの改善
 (ボトックス療法との併用可能です)

片方の顔の表情筋に麻痺を来すほかに、難聴・耳鳴り・音響過敏などの聴覚異常、麻痺側の味覚異常(舌前2/3の味覚低下)、ドライアイやドライマウスなどの涙液・唾液の分泌低下などが症状として現れる場合があります。

顔面神経とは

顔面神経は12対ある脳神経の7番目の脳神経で、主に顔面の表情筋に分布する運動神経です、大脳皮質運動野か橋・延髄にある顔面神経核までを中枢糸とし、以後の表情筋に至るまでを末梢系とします。その他に涙腺、顎下腺、舌下腺に接続する副交感神経線維、舌前2/3の味覚を伝える感覚神経からなっています。

図1の通り、脳幹を出た顔面神経は、耳の斜め下方にある顔面神経管を出た後、耳下腺を貫いて顔の側方から前面へと分岐し各筋肉に接続しています。ちなみに、顔面神経管の入口側に「くの字」に曲がった部分がありますが、ここは膝(ひざ)神経節と言われ、特に顔面神経の圧迫が起きやすい部位です。

顔面神経は、脳に近いところでは4000本あまりの神経線維が束になっています。神経の束が、炎症による浮腫などで圧迫を受けると髄鞘(ずいしょう)や軸索(じくさく)と呼ばれる部位が損傷し電位信号の不伝導が起こります。

特に、顔面神経の損傷は、上図の顔面神経管部で生じる場合が多くあります。炎症が起きると、硬い骨に囲まれた狭いトンネルの中で、神経線維が腫れ上がり、その内圧で線維がダメージを受けます。

顔面神経麻痺の経過

神経の損傷度合いによって予後が異なりますが、数週間から数か月という期間を経て神経線維は回復、し再生します。但し、神経の損傷が激しい場合などは、回復過程ではじめとは異なった線維同士が誤ってくっついてしまうと病的な共同運動が起きてしまう可能性があります。これは、本来は口を動かす筋肉につながるはずの神経線維が、目を動かす筋肉に接続してしまうなど、深厚な後遺症となる場合があります。

神経損傷の度合い

神経無動作・・・髄鞘のみの軽度変性で通常は元通りに回復しうる。
軸索のみ断裂(不完全断裂)・・神経鞘が残存していれば軸索は正常に回復しうる。 
神経断裂(完全断裂)・・・・・・完全回復は難しい。病的な軸索再生による病的共同運動を起しやすい。

神経損傷後の神経修復過程

神経線維は断裂によってそれ以後の神経線維が変性しても、神経線維は再び突起を伸ばし、元の線維と再接続しうる自己修復機能を有しています。断裂した神経線維は、1日1mmのスピードで再生し、3~4ヶ月で表情筋に到達するといわれています。

この到達に至る過程で、神経の再生が誤った方向へと進んだ場合、順調に回復しているようにみえて、いざ筋肉が動くようになったら、こんどは病的共同運動の問題が生じるというケースがあります。そのため、発症早期の段階から、神経断裂の可能性がある場合は、日常生活動作に注意を払う必要があるのです。

神経の損傷度合いによって予後が異なりますが、数週間から数か月という期間を経て神経線維は回復、し再生します。但し、神経の損傷が激しい場合などは、回復過程ではじめとは異なった線維同士が誤ってくっついてしまうと病的な共同運動が起きてしまう可能性があります。これは、本来は口を動かす筋肉につながるはずの神経線維が、目を動かす筋肉に接続してしまうなど、深厚な後遺症となる場合があります。

このように神経線維は、前とは異なった神経と誤って接続することがあり、これを神経の迷入再生といいます。これにより、例えば口を閉じようとしたつもりが目を閉じてしまったりする病的共同運動や、筋力低下や顔面拘縮、顔面痙攣などの深刻な後遺症となる場合があります。

特に、眼輪筋(瞬き)と口輪筋(会話や食事)との間で病的共同運動が起こりやすいと言われています。これは神経細胞が、より使用頻度の高い筋肉へと導かれて突起を伸ばしていく傾向があるからです。
また、本来、神経線維の束は絶縁体に覆われており、刺激が他の神経線維に誤って伝わることはありません。しかし、顔面神経麻痺にともなって神経線維の絶縁体損傷が起きた場合、隣接する神経線維に誤った接触伝導が起こることがあります。これにより、顔面の不随意運動が起こる場合があります。

表情筋の解説(顔面神経麻痺を正しく理解するために)

顔は、20種類以上の筋肉から構成されており、それらの筋肉が連携して笑う、泣く、怒るなどの人間特有の複雑な表情を作っています。表情筋は特に目、口に関するものが多く、そのほとんどの筋肉は盤面神経の支配を受けています。例外として、目を開く作用の上眼瞼検挙筋は動眼神経、また咀嚼筋は三叉y神経による支配を受けています。

前頭筋(ぜんとうきん) 
前頭骨から始まり、おでこを覆った後に眉毛付近に停止しています。 
眉毛を挙上し、おでこに「横しわ」を作ります。 
この筋肉が麻痺すると「おでこのしわ寄せ」が出来なくなります。

眼輪筋(がんりんきん) 
目の周りを輪状に囲んでいる筋肉です。上眼瞼と下眼瞼を近づけ、目を閉じるように働きます。内側の眼瞼よりも外側の筋肉の方が強く収縮するので、年齢とともに「目じりのしわ」が深くなります。この筋力差(外眼輪筋>内眼輪筋)は涙が眼表面を潤すのに効率良くできています。 
一方、目を開くときに働く筋肉を上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)といい、動眼神経の支配を受けています。 1日の瞬きの回数は2万回とも言われていますので、眼輪筋は極めて頻回な収縮活動を行っていることになります。

雛眉筋(しゅうびきん) 
左右の眉毛を内方に寄せることで「眉間にしわ」を作る筋肉です。眼輪筋と連動し、眩しい時に目をしかめたり、苦しいとき等に眉間にしわを寄せ感情を表す筋肉です。

鼻根筋(びこんきん) 
鼻根の上両側から始まり、額に付着している筋肉です。鼻の付け根に横しわを作る筋肉です。

鼻筋(びきん) 
鼻腔を広げる筋肉の総称です。鼻孔拡大筋や鼻孔圧迫筋などがあります。匂いを嗅ぐとき、くしゃみをするとき、鼻から大きな息を吐くときなどに働きます。

口輪筋(こうりんきん) 
唇の周りを輪状に囲む筋肉で、口元の様々な表情を作り出します。 
また、口から食物や水分がこぼれないように口を塞いだり、口笛を吹いたり、言葉を滑らかに発声する際に重要となる筋肉です。眼輪筋とともに、日常的に頻繁な収縮を繰り返しています。 

頬筋(きょうきん) 
大臼歯側面の上下顎骨から始まり、口輪筋と口角に停止している筋肉です。
口角を斜め上に引っ張る作用があり、笑いや喜びなどの感情を表現するときに働きます。 
この筋肉が麻痺すると麻痺側の口角が下がります。その他、笑ったり泣いたりする際に、口元を外方に引っ張る筋肉に、笑筋と大頬骨筋(停止、口角)、小頬骨筋(停止、鼻唇溝)、上唇挙筋などがあり、ほうれい線の形成に関与しています。 

オトガイ筋(おとがいきん) 
下顎の皮膚を上方に引き上げる働きがあり、この筋肉が衰えると二重あごに見えます。酸っぱい物を食べた時にオトガイ筋が収縮して顎の中心部にしわを作ります。 
一方、口角や下唇を下げる筋肉に、口角下制筋(こうかくかせいきん)や下唇下制筋(かしんかせいきん)があります。

<その他の顔面神経支配筋>

アブミ骨筋(あぶみこつきん) 
耳の中耳にある耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)のうちの最も内耳寄りのアブミ骨に付着した最小の筋肉。大きすぎる音(振動)が直接、内耳に伝わらないようにアブミ骨筋が緊張し、振動を軽減することで大きな音から内耳を守る。ですから、顔面神経麻痺によりアブミ骨筋が麻痺すると、音をうまく調節できないため、音が大きく響いたり、耳鳴りがする場合があります。